2009年7月31日金曜日

統合失調症は身近な病気

有病率を見ても明らかですが、統合失調症という病気は、決して特殊なものではありません。
もっと身近な、私達の周りにも、そして私たち自身にも存在しうる病気と考えていいかと思います。
有病率0.5%†2%という数字がどの程度なのかというのを認識するため、他の病気の有病率の例を挙げてみましょう。

まず、喘息。
学校のクラスメートの中に、恐らくは一人や二人はいるのではないかと思われる病気ですね。
この喘息で、有病率3%程度と言われています。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍で、1†2%です。
つまり、こういった病気と統合失調症はほぼ同じ割合、同じ数の患者がいるということです。

喘息や胃潰瘍が特殊な病気であるという認識は、まずないかと思います。
ありふれた、よくある病気のひとつですよね。
つまり、統合失調症もまた、そういう病気の中のひとつという事です。

精神分裂病と呼ばれていた頃は、こういった考え方がなかなか認められませんでした。
極めて特殊な病気で、そんな病気にかかっている者が身内にいることは恥ずかしいとさえ言われていました。
それが重大な誤りである事に社会が気付いたのは、つい最近の事です。
そう考えると、社会は病みつつも成長していると言えます。

統合失調症が身近な病気であるという事の証拠のひとつに、多くの著名人がこの病気で苦しんでいるという事実が挙げられます。
例えば、あの有名画家ゴッホも、統合失調症の患者だったと言われています。
これについては正しいかどうかはわかりませんが、そういう説があるということです。
また、ジョン・ナッシュというノーベル経済学賞を受賞した数学者や、画家で小説家の草間彌生さんもこの病気の患者だったと言われています。
この例からもみてとれるように、統合失調症は文化人に多く見られる病気と言われています。

2009年7月30日木曜日

統合失調症の有病率

統合失調症は、決して特別な病気ではありません。
その証拠のひとつと言えるのが、「有病率」と呼ばれるものです。
有病率とは、ある特定の場所における疾病者の割合を指す言葉です。
これと同様に、一定期間に初めて発病した患者の割合を指す「罹患率」というのもあります。

では、統合失調症の有病率はどの程度なのでしょうか。
区域で特別な偏りがあるわけでもなく、大体0.5†2%となっているようです。
2%というのはどういう数字なのかというと、とある町で検診を受けた人が1万人いたとしたら、その内の200人が該当するという割合です。

これは「検診実施時の統合失調症有病率」という表し方をします。
つまり、本当にその町全員を調べて出した数字ではないという事ですね。
ただ、町の全員が検診を行う事はないので、本当の意味での正しい数字は出しようがなく、実質的にその数字がこの町の有病率となります。
サンプル数的に見て、統計学的には問題がない数字なので、信憑性は高いと言えます。

つまり、これを日本にあてはめてみると、人口1億3000万人中、大体100万†200万人くらい入るだろうと推測される病気である事がわかります。
この数字を見れば、統合失調症が特段珍しい病気ではないという事がわかるかと思います。
実際、こういった病気は現代病と言われがちですが、遥か昔から存在していました。
そして、それが病気であると認識されたのは、つい最近の事です。
全ての患者が病院に行っているわけでもないため、潜在的にはかなりの数に上るのではないかという事も予想されます。

2009年7月29日水曜日

統合失調症の歴史 1900、2000年代

統合失調症における歴史は、1900年代に突入すると大きく変動します。
まず、1911年にスイスの精神医学者オイゲン・ブロイラーによって、早発性痴呆という名称が変更となります。
ここで登場するのが、多くの人が知るところとなった「精神分裂病」です。
そして、その変化はただ名前を変えただけには留まらず、より正しい認識へと導かれていきます。
精神分裂病は、痴呆とは種類の違う病気であるという見解がなされたのです。
結果的にこの見解は正しいとみなされ、精神分裂病という名称と共に、一般人の知るところとなっていきます。

この後、世界の精神医学者たちは精神分裂病の治療方法を探し研究を行います。
1952年には、フランス人の精神科医がクロルプロマジンによる治療効果の評価を行い、これ以降精神疾患に関する治療は飛躍的に進歩していきます。

2000年代に突入すると、精神分裂病という名称は統合失調症に変動します。
これまであった精神分裂病への誤った認識を改めるためです。
精神が分裂するというのは、通常私たちが使用している意味の精神が分裂するわけではないという事を明確にするための処置でした。

これらだけでなく、2000年代に入ると、様々な精神疾患に対しての認識が変化していきました。
これは、1990年代に入ってから、精神疾患自体がかなり社会問題に発展した事が原因です。
この流れから、統合失調症に関しても、かなり認識が変化してきました。

2009年7月28日火曜日

統合失調症の歴史 1800年代

精神疾患は、かなり昔から存在が確認されていた病気です。
統合失調症に関しても、既に古代ギリシャ時代から、その症状が知られていたと言われています。
統合失調症は決して現代が生んだ病ではないという事です。
ただ、これが病気であるという認識がなされたのは、そのだいぶ後の話です。
例えば、中世の時代では、こういった病気は病気とはみなされず、幻覚を見たり幻聴を聞いたり、あるいは不可解な言葉を発するという症状を発症した人に対しては、「悪魔つきである」という見方をなされていました。
よく物語などで語られる事のある悪魔つきなどというのは、統合失調症が原因ではないかとも言われています。

統合失調症が病気と認識されたのは、1800年代に入ってからです。
1852年、フランスの精神科医のモレルにより、はじめて統合失調症が病気として公式に発表されました。
しかし、当時はまだ研究が進んでいないため、病気の分類としては、現在における認知症のような扱いだったようです。
病名は、日本語に訳すと「早発性痴呆」となっていました。

この後、1800年代後半になってくると、ドイツ人によって多くの統合失調症が明らかになっています。
緊張病や破瓜病などです。
そして、1899年にドイツ人のエミールという人が、それらをまとめて早発性痴呆とした、と言われています。

1800年代において、統合失調症はまだ研究の初期段階でした。
それでも、これらの症状が病気であるという事を認識できたというのは、非常に大きな前進であったと言えるでしょう。

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2009年7月27日月曜日

統合失調症という病気

統合失調症という病名を御存知の方が、果たしてどれくらいおられるでしょうか。
恐らくはあまりいないのではないかと思います。
というのも、この病名はつい最近生まれたものだからです。
2002年までは、統合失調症ではなく「精神分裂病」と呼ばれていました。
この「精神分裂病」という病名は、聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。

精神分裂病という呼ばれ方をしなくなり、統合失調症という病名になってまだ10年も経っていないので、名前自体にはあまり知名度がない状態ですが、その症状に関しては、既に明治時代から認知されていました。
ただ、精神分裂病という名称は、あまり好ましく思われていなかったようです。
精神が分裂するというこの病名は、普段私たちが使う意味での精神ではなく、医学用語としての精神を意味します。
にも拘らず、精神という言葉を日常で使う方の認識で私たちは理解しますよね。
その為、病名と実際の病気との間に認識の剥離が生まれてしまいました。
そういったこともあり、2002年にようやく名称が変わったのです。

この病名が変更になった背景には、病気そのものへの偏見、あるいは蔑視といったものが少なからず含まれていた事もあります。
現代の世界において、精神疾患はだいぶ見直されてきてはいますが、やはりまだ完全とはいえず、偏見の目はまだ数多く残っています。
統合失調症で苦しんでいる方の多くは、病気自体だけでなく、そういう環境に悩まされているという事を、是非多くの人に認識して欲しいところです。

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2009年7月14日火曜日

統合失調症の作業療法

統合失調症の治療に関しては、しっかりしたプロセスが必要となってきます。
まず、患者自身に対して統合失調症であるという自覚を持たせます。
ここが一番重要であるというのは、心理療法の項目で記したとおりです。
自覚してもらえれば、薬の処方を行い、服用してもらうことで、症状の抑制が可能となります。

統合失調症と一言で言っても程度は様々で、薬によってその症状を抑えるだけで日常生活を送れるようになる患者も大勢います。
そういう場合は、薬の処方と心理療法のみで経過を待つことになるでしょう。
ですが、中にはかなり重度な統合失調症の患者もいます。
そういう場合は、ただ薬で症状を抑えるだけでは社会復帰は難しいようです。
そこで、ソーシャル・スキル・トレーニングや、作業療法を行う事になります。

ソーシャル・スキル・トレーニングというのは、社会的技能の回復を図る治療方法です。
社会的技能というのは、他者とのコミュニケーションがほとんどの割合を占めます。
あるいは一般常識などの形成も含まれます。
これらをしっかりこなせる為に、グループを作り、その中で訓練を積んでいくといった治療がされています。

また、作業療法も同様に行われます。
これは、日常生活を送る事が困難な状態の患者に対して行われる治療です。
作業療法の主な内容は、単純作業・創作作業・スポーツなどです。
例えば、絵を描いたり、陶芸や園芸を行ったり、簡単なスポーツを行ったりする事で、ストレスを解消し、情緒の安定や思考のまとまりを扶助するというものです。
作業療法は、精神疾患において非常に効果の期待できる治療と言われています。

2009年7月13日月曜日

統合失調症の心理療法

統合失調症における一番スタンダードな治療法は薬物療法ですが、薬だけでは治らないケースも多いとされています。
特に、陰性症状の場合は薬だけで治療という事はほとんどなく、別の方法と併用して行われます。
心理療法もその中のひとつです。

統合失調症の場合、薬に対して非常に大きな嫌悪感を抱く人も多く、また、自分が精神疾患であると認められない人も多いようです。
そういった人たちに対し、まず「貴方は統合失調症である」という事を認識させ、治療が必要なのだという事をわかってもらうことが必要なのですが、この際に心理療法が用いられます。

心理療法というのは、いわゆるセラピーに近いものです。
精神面の回復を図る為、様々な試みを用いて患者をリラックス、安心させる事を主な目的としています。
統合失調症においては、自閉、人を信じられない、過敏性など、精神面での問題がかなり重複します。
これをひとつひとつ解きほぐし、少しずつ治療していくのが、心理療法なのです。

心理療法によって自分が病気であると自覚した患者は、ほとんどの人がその病気を治したいと思います。
そうなると、だいぶ治療は進みやすくなります。
薬も素直に服用し、社会復帰の為に必要なトレーニングもこなすようになります。
そうなる為には、心理療法における先生と患者の信頼関係が必要です。
心理療法は、信頼を築く事が何より重要なのです。

正常な状態の人と信頼関係を築くのでさえ難しい中、自閉などの症状に陥っている人との信頼を築くというのは、甚だ困難ですが、それを可能とするのが統合失調症の治療の為にこれまで培われてきた研究であると言えます。

2009年7月12日日曜日

統合失調症の薬物療法

統合失調症は、精神疾患の一種です。
もしも、統合失調症になってしまった場合、一体どうやって治療するのでしょう。

通常の精神疾患の場合、軽度な症状の時には精神安定剤が処方されます。
ただ、中には安易にこの精神安定剤を処方する病院もあります。
精神疾患に対して深く分析せず、まるでさじを投げるかのように、精神安定剤のひとつ覚えで処置をしているというケースが結構見受けられるようです。
実際、90年代まではそういう状態でした。

今は、精神疾患への理解が深まってきている事から、その兆候がある患者に対してはしっかり薬の処方がされています。
統合失調症と診断された方の場合、ドーパミンD2受容体拮抗作用をはじめ、様々な薬を処方しているようです。
ただ、統合失調症に使用する治療薬は、副作用が強いもの、高価なものが多い為、非常に難しいというのが問題点としてあります。
パーキンソン症候群を引き起こす事もあるそうです。

とはいえ、薬で症状を抑えなければ、統合失調症はかなりの確率で再発します。
自我を崩壊させてしまう事にもつながりかねません。
精神の制御を自身ではできないからこそ統合失調症であり、そこに薬の処方がなされないと、かなり厳しい事になります。
また、統合失調症の患者は薬を嫌い、処方されても服用しない方も結構いるようです。
精神疾患全体にいえる、自分が病気だとは信じられないというケース、あるいは統合失調症の症状のひとつである他者を一切信じなくなるケースなどが、薬の服用を拒むパターンとして見受けられます。

そういう意味では、まだ万人向けの対処法が確立していない病気と言えるのかもしれません。

2009年7月11日土曜日

幻覚・幻視

統合失調症においては、「幻聴」と並び、非常に多く見られる症状のひとつに数えられるのが、幻視・幻覚です。

幻覚というのは、実際にないものが見える症状の事です。
当然、それは正常な状態ではありません。
ただ、こういった症状に関しては、統合失調症特有のものというわけではありません。
また、精神疾患特有のものというわけでもありません
それどころか、正常な状態の人であっても、幻覚を見たことがあるという人は沢山います。
全人口の4分の1くらいは、一度は幻覚を見たことがあるという調査結果があるそうです。
疲労やアルコール摂取によってそういった症状が一時的に起こるという事は珍しくないとされています。

ただ、統合失調症の幻覚の場合はかなり危険です。
頻度が高く、より鮮明に映るようです。
その為、その幻覚に対して戸惑いを覚えるのではなく、その幻覚が実際に存在しているものとして認識し、それに対して何らかの反応を示します。
その結果、周りから見ると異常な行動を取っているように映りますし、その行動が原因で他者を傷つけることもあるようです。

幻覚という症状は、麻薬やアルコールによって引き起こされる事が多いとされています。
その為、統合失調症とみなされる前に、まず麻薬やアルコールの中毒を疑われます。
これによって、さらに患者が心に傷を負うこともあるようです。
特に、麻薬に関しては、疑われれば相当に傷つく事になります。
そういう意味では、幻視・幻覚の症状をきたす統合失調症は、発見が難しい病気なのかもしれません。

2009年7月10日金曜日

幻聴

統合失調症において、頻繁に発症する症状は、幻聴や幻覚などといったものです。
これはそのまま妄想につながる事もありますし、独立した症状として発展していく事もあります。
統合失調症における最も基本的な症状のひとつと言って良いでしょう。

幻聴は、実際にはない音や声が聞こえているかのような状態になる事です。
少なからず、常態の方であっても起こり得る症状ではあります。
ストレスなどで身体が弱っている時、誰かの声が聞こえたような気がするということはないでしょうか。
知っている人が声を掛けてきたと思い込んだり、誰かが家を訪ねてきた時の声がした、と感じたりする事は、誰もが経験する事だと思います。

しかし、統合失調症における幻聴は、そういった単発的なものではなく、常に声や音が聞こえている状態です。
例えば、自分の悪口が聞こえてきたり、命令する声が聞こえたりというような、自分にとってマイナスとなる声が聞こえてくるケースが多いようです。

よく、殺人事件などが起こった際に、その弁明に「悪魔の声が聞こえた」などという供述がされていますね。
この場合も、まず統合失調症が疑われるようです。
実際にそうだったのかどうかは、精神鑑定によって明らかとなります。

こういった幻聴の症状を周りの人が判断する場合は、いくつかの基準があります。
例えば、独り言を延々と言っている人や、何もない、誰もない所に向かって話したり怒鳴ったりしている人に関しては、幻聴を疑っていいかと思います。
この症状は、患者にとってはかなり深刻で、日常生活を送れない状態になる事が多々あるようです。

2009年7月9日木曜日

嫉妬妄想・恋愛妄想

統合失調症における妄想は、恋愛に関してもかなり大きく現れるようです。
恋愛がらみで統合失調症になったという人も、少なからず存在しています。
それは、恋愛というものが大きな精神的苦痛を伴う事が多々あるからです。
統合失調症の要因のひとつであるトラウマにしても、大きなストレス、ショックにしても、恋愛にはよく起こりうる負荷なのです。

まず、「嫉妬妄想」がこれに該当します。
嫉妬妄想というのは、簡単に言えば病的な嫉妬です。
浮気や不倫をされていると信じ込み、携帯電話を逐一チェックしたり、浮気の痕跡がないか衣服や財布などを念入りに調べたりと、常軌を逸した執着を見せる場合、嫉妬妄想という診断が下されるでしょう。

これは、少なからず多くの人が該当するものと言えるかもしれません。
嫉妬深いというのは性格として普通に存在します。
その程度によって病気か否か、という事になるのは、ボーダーラインの設定が非常に難しいのですが、明らかに自我に異常があり、殺傷の可能性もあるという状態になると、精神疾患とみなされるようです。

また、「恋愛妄想」という直球の妄想もあります。
これは、相手に対して過剰な量の好意的なメールを送ったり、電話を時間に関係なく掛け続けたり、家の前でじっと覗いていたりなど、いわゆるストーカー的な行動を取る人に対して診断される疾患です。
簡単に言えば、ストーカーの要因という事になります。
これも性格的なものとのボーダーを引きにくくはありますが、明らかに被害者が存在しているという場合は、恋愛妄想とみなされるようです。
ドラマや漫画などでは割とよく見るタイプかもしれませんが、現実世界では病気とみなされます。

2009年7月8日水曜日

心気妄想・被毒妄想

統合失調症には、陽性症状と陰性症状があります。
妄想の類は陽性症状という分類ですが、「心気妄想」と呼ばれるものは、むしろ陰性症状のひとつとみなされています。
それは、この妄想には幻聴、あるいは幻嗅といったものが大きく関わってくるからです。
これらは通常、統合失調症における陰性症状とみなされますから、心気妄想も陰性と言って良いでしょう。

心気妄想というのは、自分から臭いにおいが発せられている、あるいは自分の身体の形がおかしい、などという誤認識を思い込みとして信じている状態の事です。
実際にはそういう事実はないにも拘らず、そう思い込む原因はいくつかありますが、一番はやはり被害妄想によるものでしょう。

統合失調症の状態だと、周りからヒソヒソ話が聞こえてくる時、自分が中傷を受けているという被害妄想が働きますが、その中傷される原因が自分の身体にあるのでは、という考えから、こういった心気妄想に発展するケースが多いようです。
酷くなると、身体の中に虫が入り込んでいるような幻覚が現れるようです。

また、「被毒妄想」というものもあります。
被毒妄想も被害妄想の一種で、自分が毒を盛られるのでは、という思い込みに囚われ、食事をとれない状態になるようです。
家族の手料理にも一切口をつけなくなります。
この場合は、1人でこっそり食事をするという状態になります。
この症状は、被害妄想の中でもかなり厄介で、酷くなると何も口にできなくなるという状態になります。

2009年7月7日火曜日

誇大妄想

統合失調症において、最も顕著な症状と言えるのが、「誇大妄想」かもしれません。
統合失調症のほとんどの妄想は、この誇大妄想が発展した形と言えるでしょう。

誇大妄想というのは、自分自身に特別な力があると信じるとか、自分だけが社会から、周りの人から嫌われ、ないがしろにされていると考えるとか、そういった事実を大きく飛躍、誇張した思想を元に行われる妄想です。
統合失調症における妄想の多くは、この誇大妄想から派生した形で行われていると考えて良いでしょう。
ありもしない事を事実であるかのよう認識してしまうというのが、この病気の基本的な在り方ですが、誇大妄想はその典型と言えます。

誇大妄想の厄介な点は、躁鬱両方の場合に発生する事です。
躁の場合は、自分にできない事はない、自分は神だ、といった、宗教妄想や血統妄想などの類を引き起こします。
一方、鬱の場合は、自分は周りの人間から常に中傷を受けているとか、常に誰かから監視されているといった被害妄想などを引き起こします。
いずれにしても、精神的にはかなり不安定な状態に陥る可能性が高いと言えます。

誇大妄想というものは、低い程度であれば少なからず誰しもが一度や二度は抱くものです。
自分に対する過大評価、あるいは過小評価からくる周囲とのズレ、そして摩擦というのは、別段珍しいものではありません。
ただ、統合失調症になると、これが際限なく大きくなり、そして固定観念として患者の精神を追い詰めていく事になるのです。

2009年7月6日月曜日

注察妄想・追跡妄想

統合失調症の陽性症状は、幻覚を見たり、幻聴を聞いたりするという症状が主にあります。
それらは妄想の部類に入ると言って良いでしょう。
実際に幻覚や幻聴を覚えるというのは、肉体的な問題によって引き起こされるケースもありますが、統合失調症におけるそれらの症状は、肉体的に何ら問題がない場合の妄想が生み出すものなのです。

その中にあって、自分自身をその幻覚や幻聴が追い込むという類の妄想もあります。
それは、「注察妄想」や「追跡妄想」です。
いずれも、統合失調症におけるスタンダードな妄想かと思います

注察妄想というのは、自分が常に監視されているという妄想にとり憑かれている状態の事を指します。
常に誰かに見られているという感覚から、自分を見ている人の幻覚を見ることもあるようです。
これは、被害妄想の一種でもあります。
ただ視線を感じるというだけではなく、実際に見られている状態であると確信し、外を出歩けなくなるという状態が、注察妄想です。

それに対して追跡妄想というのは、常に誰かから追われている状態だという妄想が働いている状態を指します。
幻覚、幻聴によって、それがより一層顕著になる事も多々あるようです。
追跡妄想も、注察妄想と同じく、外を出歩けない状態となります。

こういった症状は、精神的に参っている状態の人にも比較的訪れやすいといえます。
ただ、統合失調症ではない人の場合、そこで気のせいだと割り切ることができます。
一方、統合失調症の人の場合は、精神的にどんどん追い込まれ、自分が何者かから命を狙われているという認識で支配され、それを純然たる事実として他者に話したり、一切の交流を遮断するという方向に流れていってしまいます。

2009年7月5日日曜日

血統妄想

統合失調症における誇大妄想は、様々な種類に分類できます。
その中にあって、「血統妄想」というのも症状のひとつとみなされています。
血統妄想も、自分を誇大する為の妄想です。

統合失調症の血統妄想とは、自分が高貴な血を引く人間であると信じ込んでいる状態の事です。
これが例えば実際に高貴な生まれであるならば、特に問題はありません。
性格的に他者を見下す、あるいは高圧的な態度を取るというのは、ただのパーソナリティの問題です。
ですが、血統妄想の場合、実際はそうではないのに、そうであると確信している状態である事が問題となります。

統合失調症は、思い込み、盲信といったものが主だった症状となります。
血統妄想の場合は、自分をより偉く、より強く見せるという願望から、自分の血統を誤った状態で信じ込んでいるというケースに至ることが多いようです。
ただの思い込みのレベルではなく、実際にそうである者として行動、言動を行うという点に問題があります。
周りの人から見れば、やはりそれは「危険な人」という認識をせざるを得ないでしょう。

血統妄想は、天皇陛下の隠し子であるとか、織田信長の生まれ変わりとか、そのような思い込みが多いようです。
つまり、現状の自分で満たされない部分を、血統という安易なステータスの向上によって補うというものです。
一種のブランド志向に近いかもしれません。
ただ、本人にしてみれば、それが真実なので、親は本当の親ではない、天皇陛下の子供なのだから何をしても良い、何を買っても良い、などという思想に発展し、実生活に影響を及ぼす事になります。

2009年7月4日土曜日

宗教妄想

統合失調症の陽性症状には、「宗教妄想」という分類をされる症状もあります。
これは、誇大妄想に近い、あるいはその中のひとつという分類をされる事もありますが、ここでは独立したひとつの種類として取り扱います。

統合失調症における宗教妄想というのは、簡単にいうと自分を神、もしくはその生まれ変わりであると信じ、それを実際に周りの人に話すというタイプの症状です。
誇大妄想に近いというのは、自分を極限まで誇大しているからですね。

世界は自分を中心に回っている。
自分は世界の救済者である。
来るべき時に備え、自分は神となって自分を信じる民を救う使命がある。
現在の世の中を壊し、新たな楽園を作る。
などといった、漫画などでよく見られがちな思想にふける状態がよく見られます。

また、自身を神と信じるだけでなく、他の何かを神と信じ、その神の為には手段を選ばない状態も宗教妄想といえます。
こういった精神疾患は、度々大きな事件を呼び起こしていました。
一番有名なのは、大きな社会問題ともなったオウム真理教でしょう。

宗教妄想というのは、ある意味最も危険な状態といえます。
宗教にはまるという言葉がありますが、この極限状態がこの宗教妄想です。
厄介なのは、自身、もしくはその宗教に対して、盲目的な状態になっている為、理想実現の為には他者を傷つける事を厭わないという点です。
その為、大きな事件になりやすいという性質があります。

病気の診断に関しては、比較的易しい部類と言えます。
だれでもその異常性には気付くことができるからです。
そして、この宗教妄想は統合失調症の中では多い部類に入ります。
こういう時代だからこそ、多くなっているのかもしれません。

2009年7月3日金曜日

関係妄想

統合失調症における妄想は、いくつかの種類に分類されています。
その中のひとつに、「関係妄想」という症状があります。
被害妄想とも通じるところがありますが、分けて考えるのが一般的のようです。

統合失調症の妄想の中にあって、関係妄想はある意味基礎的な部分と言えるかもしれません。
というのも、関係妄想は、他者の行動や表情などが、自分と関係しているという妄想をするというものだからです。
例えば、街を歩いている時に、後ろから笑い声がしたとします。
すると、その笑い声は自分を嘲笑しているのではないかという妄想が働きます。
これが関係妄想です。

この例だけを見ると、普通の人でも多少なりともあり得る発想ではないかと思われるかもしれません。
実際、それは正しいでしょう。
しかし、統合失調症における関係妄想というのは、これを常に断定する状態に陥っているのです。
その結果、常に自分は好奇の目に晒されている、笑われている、という妄想にとり憑かれ、精神を蝕んでいく状況になってしまいます。
これは、被害妄想ともかなり近い部類と言えます。

関係妄想は酷くなってくると、ヒソヒソ話は全て自分の事を話していると断定したり、特定の歌の歌詞が自分の事を言っていると思い込んだり、テレビや新聞で組まれた特集が自分の事を指し、笑いものにする為にやっていると思い込んだり、という症状がでてくるのです。
こうなると、最終的には自我が崩壊してしまう可能性もあります。

2009年7月2日木曜日

被害妄想

統合失調症における陽性症状にはいくつかの種類があります。
その中のひとつが妄想ですが、この妄想もいくつかの種類に分類できます。
そうやって細分化された中にあって、特に近年増加しているタイプというのが、被害妄想です。

統合失調症において、ある意味一番スタンダードな部分が被害妄想かもしれません。
同時に、一般人にとってもかなり馴染みのあるもので、それ故に統合失調症という病気とは結び付けられないケースが多々あります。
実際、性格的な部分で処理される事が多い症状です。

被害妄想というのは、実際にはそうではないのに、自分が被害にあっているという思い込みが極端に強い状態の事です。
小さい点で例を挙げると、周りの人が皆自分を中傷しているような妄想にかられる状態です。
これは思春期によく起こる例ですが、道や廊下を歩いていて、そこでひそひそ話をしているグループを見かけると、その人たちが皆自分の悪口を話していたり、自分を蔑視したりしているのではないかという思考に囚われるという事はないでしょうか。
これが被害妄想の一番顕著な例です。

これが酷くなると、誰に対しても自分に何か被害を及ぼすような画策を練っているとか、常に自分を落としいれようという考えがあるとか、自分を軽視、蔑視しているとか、そういった考えしかできない状態になっていき、その妄想に対して攻撃的、あるいは悲観的、絶望的なイメージを膨らませていくようになります。
その結果、暴力を振るったり、引きこもりになったり、あるいは自ら命を絶とうとしたりする事になるのです。
周囲とのトラブルが絶えない人の場合、この被害妄想という症状がかなりの確率であてはまります。
被害妄想は立派な病気なのですが、そう認識される事は少ないようです。

2009年7月1日水曜日

陰性症状

統合失調症は、陽性症状と陰性症状の二つに分かれます。
陽性は妄想や幻覚といった、現実と剥離した部分での症状です。
では、陰性症状というのは、どのような症状を指すのでしょう。

統合失調症における陰性症状は、無気力、無関心、思考能力や感情表現の著しい低下、自我失調など、所謂自閉症や引きこもりに見られる症状の事を指します。
陰性という言葉と掛けているのか、陰に隠れて見えにくい症状であると言えます。

統合失調症は、現実との剥離という部分が大きなウエイトを占めていますが、陰性症状の場合は、現実的な剥離を示します。
その要因は様々ですが、単に自分の思惑や欲求によって社会との乖離を望むのではなく、精神状態が他者とのコミュニケーションを図る段階から遠ざかってしまっている状態に陥っている場合、陰性症状となります。

自閉や引きこもりという状態は、他者との交流を一切拒絶する状態です。
最近はこういった症状に関して安易にテレビなどで報道されていますが、その全てが同じものとは限りません。
中には単に楽をして暮らしたいだけの人もいますし、うつ病の人もいますし、統合失調症の人もいるでしょう。

同様に、感情が著しく鈍くなっているケースにしてもそうです。
あえてそうしている人もいますし、意識的にではなくそうなっている人もいます。

陰性症状の場合、そういった面がかなり周りの理解において難しいと言えます。
思考能力の崩壊というところまで行かないと、病気と判断できないというのが一般的な現状かもしれません。